ゲーム以外の雑記(井上明人)

最近は、ほとんどキーボードの話をしています。

自作キーボードの選択基準

ぼんやりメモ。自分は、PCBについては、もうzincでいいと思っているが、いくつかのトレードオフ、選択プロセスがあるので、改めて、簡単に整理しておこう。

すでにまとめている人は多いと思うので、あくまで、自分なりのメモということで。

 

 

最初につくるときに、どこまで保険をかけるべきか

これをあまり書くと人がいないのだけれども、自作キーボードをはじめてやる場合、最初の一台は、

の2点を遵守したほうがいいように思う。

 

PCB編1:最大の論点一般のキーボードとの互換性をどこまで気にするのか?

前提:

  • 互換性が高いもの:Row Staggerd ,日本語JISキーボード配列、60%以上のキーボードのすべての条件がそろっていれば、分割キーボードであったとしても、ほとんどの人が一週間以内に慣れると思う
  • 互換性が低いもの:Column Staggerd、ortholinearなどで、英ANSI系配列、40%未満のキーボードなどの条件が増えてくると、多くのひとにとっては慣れるのに時間のかかるキーボードにはなると思う。

具体的チョイス:

  • ほぼ一般JISキーボード互換otaku splits、Satsuma JP
  • 互換性高め:mint60、YMDK64、Cocoa60、7sKB(どれもRSの60%キーボードで扱いやすいが、ANSIである点に注意)
  • 互換性については覚悟が必要:zinc(RS40%)、helix(ortho)、Lets split(ortho)、Lily58 Pro(CS60%)、treadstone48(RS40%)
  • かなりチャレンジ:nomu30

コメント

  • 単に肩こり対策的に分割のキーボードがほしいという人は、下手に自作キーボードに手をだすよりは、mistelの日本語配列(※自作ではないが)とか、kinesisの分割キーボードとかの既製品を買った方がトラブルは少ないと思う。
  • 自作キーボードは、親指シフター的なキーカスタムをしたいという人にこそ向いていると思う。

PCB編2:親指の位置をどうするのか。

特に親指シフターなど、親指位置のカスタムを気にする人にとっては重要な問題。

QWERTYで親指をあまり活用しない人は、気にしなくてもよいが、最下段のキーの位置のカスタムがどのようになっているかは、自作キーボードのバリエーションを見る上でも重要なポイントなので、見ておくとよい。

 

キースイッチ編:どのスイッチを選ぶか

前提

 キースイッチに関しては、キースイッチの軽さ(押下圧、押上圧)、静音性、荷重特性、安定性、actuation pointの浅さなど、さまざまなポイントがあるが、キースイッチはPCBと違って、比較的素直に好みのキースイッチを選べば良いというところがある。別に、やや特殊なキースイッチを選んだところで、一般のキーボードに戻るのにさほど支障はない(と思う)

 基礎知識的なことを荷重特性に関してだけ確認しておくと、リニア派(Cherry赤軸など)と、タクタイル派(Cherry茶軸)に分かれると印象。

  • タクタイル:押し込む最初のときに圧がかかって、その後に圧が下がるタイプの荷重特性のキースイッチ。Cherryの茶軸は、タクタイル系キースイッチの一種。Real force、HHKB、リベルタッチなどの有名キーボードのキースイッチはだいたいがタクタイル系なので、究極のキースイッチはタクタイルなのではないかという印象を持っている人は多いと思う。
  • リニア:キーを押し込むと徐々に圧が強くなっていくタイプ。押し始めが軽いので、「軽いキータッチが好きならリニア」と思われていることが多いと思う。リニアの良さは個人的には、軽いバネを実装しやすいことにあると思っている。キースイッチオープナーでキースイッチを開けて、軽いバネを入れた場合、タクタイルだと、せいぜい35gが限界という感じだけれども、リニアであれば、15gぐらいまでいける。
  • クリッキー:Cherry青軸など。ゲーマーにはクリッキー好きが一定数いるが、自作キーボード界隈だとかなりマイノリティという印象。

  あと、浅い押し込みで反応するような高速タイピングやゲーミングキーボードを求める場合は、銀軸(リニア)などの浅い押し込みで反応してくれるものもある。

 また、Low Profile仕様のキースイッチもあるが、PCBによってLow Profile対応のものとそうでないものがあるので要注意。

 

具体的チョイス:

 基本的に軽いキースイッチを目指すリニア派の人間なので、タクタイルのことはあまりわからない。その前提の上で書いておくと、キースイッチに関しては、自作キーボード界隈では、いろんなひとがわいわいと好みのキースイッチを語っているが、一般の人に触ってもらって違いが明らかにわかるのは、わかりやすいだろう順にいうと、

1.キースイッチの軽さ

2.静音性

3.荷重特性

4.安定性

5.actuation pointの浅さ

 の順だろうと思う。キーボードに興味のない一般の人は、cherry茶軸と、cherry赤軸を押しても、そこまで違いがピンとこない人もいると思うが、cherry赤軸と、cherry黒軸を押し比べてみれば、さすがに違いはわかると思う。あとは、クリッキーとそれ以外の違いも、明らかに音が違うのでわかるだろう。

 一般的なキースイッチの流通を考えると、やはりまずは、ヨドバシとかの店頭で、cherry軸の赤、ピンク、茶、青、黒、銀の違いを体験してもらうあたりからはじめるしかないだろうと思う。

 その上で、自作キーボードのキースイッチとなると、最初から、高いものを買っても良いという人は、「キースイッチ ベストプラクティス – recompile keys」でも推奨されているGateron Ink Black(60g)などを購入してもいいのかもしれないが、もう少しキータッチの違いが「わかりやすい」ものを薦めるということを考えると、まずは次のようなキースイッチが「わかりやすい」のではないかと思う。

  • Gateron clear:35gという軽さが露骨でわかりやすい。
  • TTC Silet red:わかりやすく静音性が高い。(入手経路がやや少ない)

 軽いバネを目指す人は、いずれにせよ、キースイッチオープナー軽量バネも買ったほうがいいとは思う。ルブについては、こだわりたければ、やってもいいとは思うが、最初からルブをやっても違いがわかりにくいわりには、手間がかなりかかるのでルブをやるのは、沼に完全に浸かりきってからで良いと思う。

 バネの重さについては、30gの世界は、ヨドバシの店頭にいけば、realforceで体験可能なので、あれと同じ30gか、せいぜいそれよりも少し軽い25gのバネからはじめるのがよいようにおもう。(あまりにいきなり軽くすると打ちにくいと思うので、普段45gの人はせいぜい30gぐらいがおすすめ。)

 

キーキャップ

 これは、ほとんど好みの世界と言って良い部分が多いと思うが、値段のことはさておくとしても、形状(SA、DSA、XDA、MDA、Cherry、OEM)、素材(ABS/PBT)、デザインの三点が大きなポイントだろうか。あと、初心者向けアドバイスということで書いておくと、配列が日本語標準に対応しているのか、米国ANSI対応なのかは確認必須。

 それぞれの形状についてコメント

  • SA:値段が高い(物理的にも分厚い)。しかしデザイン的にもよいものが多い。pimp my keyboardで売っている各種のSAキーキャップや、KBDfansのMAX keyのシリーズなどはだいたい1万円ぐらいする。filcoのSAキーキャップはそれらと比べると相対的に、良心的な値段だし、デザインもよい。キーキャップの形状がきちんと階段状にデザインされている。
  • DSA、XDA:キーの形状が、基本的にはどれも同じなので、無刻印のキーキャップを買うときなどは、DSAやXDAだと扱いが楽。価格帯もSAに比べると、安価でデザインもいろいろなものが選べるのがよい。ただ、行によるキャップの高さの違いがないので、「究極のうち心地」派の人には、あまりおすすめしない。
  • cherry:最も一般的なキーキャップの形状。安価&ステップスカルプチャー、シリンドリカルかつ、背が低い。最近、もうこれでいいんじゃないと気がしてきている。
  • MDA:big bangのこと。ミックスともいう。ちょっと値が張るが、あらゆる面でよくできているので、無難におすすめしやすい。