ゲーム以外の雑記(井上明人)

最近は、ほとんどキーボードの話をしています。

2019独自配列選択のためのてきとうフローチャート

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てきとう理解1:独自配列選択のトレードオフ

標準規格 vs 新配列

標準規格の利点
  • 利点:ネットワーク外部性が高い。つまり対応機器が多くあり、使用者数も多い。また、すでに慣れているのでスイッチングコストもかからない。

  • 欠点:新規に学ぶ場合の習得コスト、高速打鍵、長時間打鍵における疲労軽減のどの観点からみてもすでによりすぐれた後継方式が存在する

独自配列
  • 利点:何かしらの意味で合理性の高い配列になっており、高速打鍵をするにせよ長時間打鍵をするにせよ、優れた設計思想による配列となっている

  • 欠点:習得コストがかかる。環境設定が必要。自分以外の人のPCを触りにくくなる。

トレードオフの乗り越えを目指した配列の例
  • orz配列:右シフトに対応するキーの位置を一つ右にずらした配列。多くの標準的な日本語キーボードで「変換キー」(右シフトとして運用される)の位置は、親指シフト用キーボードよりも少し右にずれているが、orz配列を使えばこの問題は概ね解決できる。

習得コスト VS 打鍵性能(速度や疲労)のトレードオフ

習得コスト重視の場合は、次の要素を大切にする
  • 清濁同置:「ば」「ぱ」「は」の位置が同じキーで打てれば覚えるのは楽。ただし、日本語コーパスもとずいた指の負担の最適化ということを考えるとマイナス。

  • シフトの機能が少ない:新JISや薙刀式は、センターシフトを採用しており覚えるべき文字の数が少ない。ローマ字入力は、そもそもシフトを押す必要がない。

打鍵性能重視の場合は、次の要素を大切にする
  • 高速打鍵重視の場合は、ただひたすらに1アクションで打てる文字数を増やす。ただし、1アクションで打てる文字を増やすというタイプの実装は基本的に習得コストと、打鍵速度のトレードオフがある。たとえば、「ぎゃぎゅぎょ」などの拗音を1アクションでうてるようにする拗音拡張や、「ば」「ぱ」「は」の位置を関連付けない清濁別置は習得コストが上がる。

  • また、打鍵の疲労軽減を目指すタイプの配列方式(つばめ配列など)の場合は、使うキーを限定する傾向にあるため一つのキーがこなす役割が増えてゆき、これもまた覚えるのが大変。

トレードオフのなかの位置づけ
  • ざっくりと習得コスト高いものは、拗音が1アクション、清濁別置、シフト機能が複数(親指シフト、中指シフトで左右別機能)。習得コストが低いものは、清濁同置、シフトの機能が少ない。

  • 敷居が低い印象順にざっくりならべると、AZIK-----独自ローマ字配列(SKY、けいならべ)-----新JIS規格,月配列----薙刀式-小梅配列---かえであすか-飛鳥配列-------------蜂蜜小梅-あまのあすか、新下駄----つばめ配列----------------Steno word

打鍵性能のうちのどこを重視するか:高速打鍵 vs 疲労軽減のトレードオフ

  • 「1アクションで打てる文字を増やす」「日本語コーパスに基づいた解析を行ない、配置を最適化する」というのは、高速打鍵をめざすにせよ、疲労軽減を目指すにせよどちらの利用者にとってもありがたいことだが、そこから先の運指をどのように設計するかについては、高速打鍵派と、疲労軽減派の間での若干のトレードオフがある。

  • 日本語コーパスに基づいた最適化は、最近の配列はほとんどのものが行っているが、アルペジオの重視と、小指負担のコントロールについては、配列によって温度感が違う。

疲労軽減を重視するものの場合は、次の要素を重視する:
  • 同手の連続打鍵(アルペジオ)を重視:「です」、「ます」、「する」などを同じシフトキーを押したまま打てるようにする。いわば、1音ごとの日本語コーパスの解析ではなく、2音以上の日本語コーパスの解析に基づき、連続しやすい音については同手の連続打鍵がうちやすいようにしている。

  • ホームポジションを重視:ASDF、JKL+のキーを使う頻度をあげる。YBあたりのキーは、ホームポジションから遠いのでなるべく使わない。

  • 小指に負担をかけないことを重視:よく使う音を小指以外にまかせるのは当然として。なんだったら「@」「*」「P」「/」あたりのキーからは割当自体をなくす。

  • 機能キーをホームポジション近くに持ってくる

高速打鍵を重視する場合はその逆で、上記の要素をそれほど重視しない
トレードオフのなかの位置づけ

高速打鍵重視系の発展形として疲労軽減をより強く目指すものがあるという感じで、 飛鳥配列には、アルペジオホームポジション、機能キーへの配慮がみられ、 薙刀式は、さらにアルペジオ重視とホームポジション重視に踏み切っている。 つばめ配列は、ホームポジションの重視のみをごりごりやって、習得コストも、アルペジオも捨て去っているという印象。 Steno wordは、習得コスト概念を完全にどこかに忘れてきて超打鍵を達成している印象。

てきとう理解2:最強感のある配列

  • Steno Word:ダントツの最強感があるのは、StenoWord。習得するのに一年では済まなさそうだし、そもそも市販されていないが習得コストさえ度外視すれば、発話速度を超える速度で打てる最強感が半端ない。圧倒的な範馬勇次郎感がある。アンタッチャブル
  • 新下駄:Steno wordまで極端にいかないなかでは、学習コストをすこし多めに払えば、効率性最高クラスの一角。
  • 飛鳥:新下駄が計算的につくられたスマートな配列だとすれば、人間のヒューリスティクスの積み重ねでつくられた配列ということでは泥臭い配列の極み。
  • 薙刀式:様々な先人たちの知恵を総合しているものとしては薙刀。実証的にはまだわからないところもあるが、思想的にはスマート。一見、めんどくさそうな配列にみえて、実はセンターシフトなのでそこまでキーボードを選ばないというあたりも魅力。
  • 蜂蜜小梅:合理的な配列に加えて、段階的に成長ステップが踏めるという点では蜂蜜小梅配列、あまのあすか配列あたりは主人公味がある。習得を少し急ぎたいなら小梅。どうせ少しぐらいしか習得コストが変わらないと考えるのなら飛鳥という感じなのでは

また、かえうちの統計をみると、独自配列ユーザーのなかでは、新下駄、飛鳥、AZIK、月配列などが多い(といっても550人中で10名いるかいないか)ようです。

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書き終わってから気づきましたが、下記の小梅配列の作者の方によるものが、このエントリと同系統のコンセプトのようです。

61degc.seesaa.net